2.4 経済システム
2.4.1 経済体制
経済体制は、大別して資本主義(市場経済)と社会主義(計画経済)があります。
資本主義(市場経済)では、資源は民間によって所有され、市場競争によって資源配分が行われます。
社会主義(計画経済)では、資源は政府によって所有され、計画によって資源配分が行われます。
純粋な市場経済また計画経済は存在せず、どの国もその中間に存在し、これを混合経済といいます。その組み合わせの比重に国ごとの違いがあります。
冷戦終了後は市場経済の方向に向かっています。ソ連崩壊後に計画経済から市場経済へ移行した経済(ロシア、ウクライナ、中国、ベトナムなど)を「移行経済」と呼びます。
2.4.2 市場経済の多様性
資本主義といっても経済への政府関与の程度には国によって差があります(図2.20)。
経済への政府関与の程度が最も低いのが「自由放任」で、アングロ系(イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド)や都市国家(香港、ルクセンブルクなど)が該当します。
市場経済を中心としながら、福祉分野への政府関与の程度が高いのが「福祉国家」で、北欧諸国、ドイツ、フランスが該当します。
市場経済を基本としながら、民間部門の経済活動支援(税制・金融支援、経済計画設定など)に積極的なのが「政府主導資本主義」で、日本、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、タイなどアジアの多くの国が該当します。
中国は1990年代以降「社会主義市場経済」という、「資源は政府によって所有」という社会主義を維持しつつ、「市場競争によって資源配分」される市場経済になっています。ベトナムも同様です。
出所)図2.21と同じ
出所)図2.21と同じ
資本主義・市場経済におけるその他の各国間の違いとして、企業の「所有と経営の分離」があります(図2.24)。
中小企業では経営者が出資者であること、すわなちオーナー経営者がほとんどです。
大企業になるにしたがって一人で出資金を出すことが難しくなったり、大きくなった企業を経営する能力に限界を感じるようになります。
そのとき、他に出資者を求めたり、企業を経営能力の高い人に託すようになります。この状態を「所有と経営の分離」といいます。
「所有と経営の分離」の状況によって、いくつかのグループに分けることができます。
所有者と経営者が分離していて、経営者は主として所有者=株主(投資家)のために経営を行うのが、「株主資本主義」です。アメリカとイギリスがその代表的存在です。法制度はコモン・ローである国が多いです。
所有者と経営者が分離していて、株主以外(従業員・地域)にも配慮した経営を行うのが、「ステークホルダー6資本主義」です。西欧諸国や日本が該当します。法制度はシビル・ローである国が多いです。
所有者と経営者が分離してなく、大企業でも家族経営が多いのが「家族資本主義」です。多くの新興国が該当します。法制度の整備が十分でない国であることが多く、関係性による契約強制力が相対的に重要となっています。
所有者と経営者が分離してなく、経営者の個人的縁故(コネ)がビジネスに影響するのが、「縁故資本主義」です。「家族資本主義」でもあることが多く、アジア、ラテンアメリカ、アラブの多くの国が該当します。
参考文献
国民負担率については、NHK(2020a)も参考にしてください。↩︎